貴女へ捧げる大合奏

合わせていくよ、せーのっ
大合葬「霊車コンチェルトグロッソ」！！

騒霊は少女が使える魔法の一つとも言われている。
ーーーそう、幻想郷の記録にはつづられていた。
今もずっとこの幻想郷で、さまざまな音楽を演奏している騒霊。
長女、ルナサ・プリズムリバー
次女、メルラン・プリズムリバー
そして三女のリリカ・プリズムリバー。
彼女たちは、プリズムリバー三姉妹と呼ばれていた。
織なされる躁の音色、鬱の音色、
時に人々を悩ませ、感動させ、楽しませた。

「私たちの音色は、受け取る側の認識次第…。
楽しいも苦しいも、嬉しいも悲しいも……
すべては観客の受け取り方に左右される」
「でも、それだとつまらない、私たちだって、
みんなの心を好きにかき乱したいもの。」

「見えないものを見せられる、聞こえない音を
聞かせられる、そんな音色を演奏したい。
1人じゃ無理かもしれないけれど、
3人なら出来ちゃうんだから！」
音楽には無限の可能性がある。人を楽しませるだけが音楽ではない。
プリズムリバー三姉妹は、自分の心が赴くままに音を奏でる、
幻想郷のあちらこちらで、ゲリラライブを開催しながらーーー

　プリズムリバー三姉妹のゲリラライブに、決まった会場は存在しない。
霧の湖でやることもあれば、人里近くの森の中でやることだってある。
すべては自分たちのやりたいように、その時の気分次第で、会場は常に変化する。
そんな彼女たちの今日のライブ会場は、とある廃洋館のエントランスだった。
窓は割れ、壁のあちらこちらに蜘蛛の巣が張り、明かりのない屋内はほぼ真っ暗。
演奏するにはあまりにも不向きな場所だーーーが、三姉妹はとてもやる気に満ちていた。
「あなたのおかげで私たちは今、ここにいる。
　　　　　　　　　　感謝の気持ちを、伝えるわ……」

「音はどこまでも届くんだから。
耳を澄ませて、そして楽しんで。
大切なあなたに捧げるプリズムリバー楽団の特別ライブを」
「たった1人のお客様。
でも、一番大事なお客様。
あなたのために貸し切ったこの会場、
今日だけは音で彩り、飾り立ててあげましょう！」

「そして一緒に奏でましょう。
あなたのパートもちゃんと用意してあるわ……」
エントランスの中央に置かれた、誰も座っていないひとり分の椅子。
目に見えないお客様を三人で囲いながら、演奏を開始する。
たった一日、今日だけは、〈プリズムリバー四姉妹〉の大合奏だ。