霊夢にとって秘密の場所。
滝の音とさざ波の音が聞こえる、美しい入り江。
「偶然見つけた場所だけど、
涼しいし、誰も来ないしで最高だわ~」
火照った身体を水で冷やし、ばちゃばちゃと水中を自在に泳ぐ。
そうして、ひとしきり水浴びを楽しんだ霊夢は、近くの草むらに声をかけた。
「隠れてないで出てきなさい。
さもないと、弾幕(たま)ぶち込むわよ」
「ちぇっ。やっぱりバレていたか。
相変わらず勘の鋭いやつだな」
やれやれ、と肩をすくめながら姿を現したのは、霊夢の親友・霧雨魔理沙だった。
「どこに行くのか気になったんで、
後をつけてみたんだが……。
まさかこのビーチにこんないい場所があるとはな」
「誰にも邪魔をされたくないから
黙っていたんだけどね。
まあ、こうしてあんたに見つかっちゃったんだし、
もう隠しきれないけど」
「霊夢の秘密のバカンス……って見出しで、
天狗に情報が売れそうだな」
「そんなことで儲けられるなら、
私が自分で情報を売るわよ。
そ・ん・な・こ・と・よ・り――えいっ!」
魔理沙の言葉を切り捨てつつ、霊夢は彼女を勢いよく海に引っ張り込んだ。
「うぶえっ。い、いきなりなにすんだよ!
あーもー、服がびしょぬれだ……」
「海に来たんだから遊ばなくっちゃ。
それとも、この暑さの中、何もせずに帰る?」
「……ま、どうせもうぬれちまってるしな」
霊夢から珍しく遊びに誘われた魔理沙は、ちょっと照れくさそうに鼻をかく。
それから数時間、二人の楽しそうな笑い声が、夏の海に響き渡るのだった。